以前、戸建のお宅を検針している時「すみません、助けて下さい」と女性の声がどこからか聞こえ、捜してみると玄関の横の小窓から手が見えました。「どうされましたか?」とお声掛けすると、「お風呂場にいるのですが、戸が壊れて外に出られなくなりました。居間に赤ちゃんがひとりでいるので、様子を見て欲しい。」と言われました。玄関は鍵がかかって入れなかったため、外から居間を覗き込むと、赤ちゃんが大人しく寝ていました。しかし、その部屋にはストーブがたかれていたため、心配されていたお母さんに赤ちゃんの様子をすぐに伝えました。すると「携帯を貸してほしい。」と言われ、近くに居らっしゃるご家族に連絡を取り、お母様も赤ちゃんも無事でした。物凄く泣いて感謝されました。
感謝する事はあっても、こんなに感謝されることは初めてでしたので、私も人の役に立つことができるのだと思い、感動しました。
検針先でお客さまからよくお声をかけていただきます。「暑い中ありがとう」「雨の中大変ね」なかには「あなたに会う事を楽しみにしているよ」「あなたと話すと元気になるよ、ありがとう」等の言葉をかけていただくことがあり、検針員をしていて良かったと思うことがあります。私の方がお客さまと会えて元気を頂いており、感謝の気持ちで一杯です。
私たち検針員は毎月数千件訪問し、1件ずつ正確に指針を読み、お客さまに正しいガスご使用量のおしらせ(検針票)をお届けする事に加え、地域の安全を見守りながら検針巡回をしています。巡回中に困っている方や体調が悪そうな方がいた時にお声掛けすると、感謝されることがありますので、私たちは地域の方々のサポーターのような役割も担っていると感じています。私たちは毎月ガスメータの指針を確認するだけの検針員ではなく、何かお困りごとがあるときに、ご相談していただけるようなお客さまにとって身近な存在である検針員を目指しています。たくさんのお客さまとの出会いの中で、会話やコミュニケーションを通じて生まれる様々な絆を大切にしたいと思っています。
地域社会に役に立つための人材を育成する取り組みとして、大学での高齢者サポートコミュニケーション研修を受講しました。その他にも様々な講演会や講習会へ参加することができるため、多様な知識を習得する事が出来ます。また、会社には検針だけでなく、定期点検の部署やコールセンター業務の部署がありますが、ひとりひとりが働き甲斐を持って働いている会社だと感じます。私たち検針の仕事は1人1人のお客さまにいちばん近い存在の仕事であり、お客さまに寄り添えられるとても有り難く幸せな仕事だと思います。生きていく上で何が大切なのか気付かせて頂ける仕事です。また、職場には仕事のことだけでなく、私生活のことも相談することができる素敵な仲間がたくさんいることも、この会社の魅力です。
日々業務の中で、お客さまの子供さんの入学式や卒業式、ご出産だったり、時にはご家族のご病気だったりと色んな場面に遭遇します。その中で、特に忘れることができないエピソードがあります。わたしが検針にお伺いしているマンションで、透析を受けるため病院の送迎車を待っているお客さまに毎月お会いしていました。いつも、同じ時間帯にお伺いしていますが、その月はそのマンションへ訪問する時間が遅くなってしまいました。今日はもう病院に行かれたかなと思いましたが、エントランスの所でその方がうずくまっていらっしゃいました。「どうされましたか?」とお声掛けすると「腰が痛く動けないので、一緒にタクシーを捕まえてくれないか」と言われ、手を繋ぎ、大通りまで少しずつ一緒に歩いて行きました。その途中、お客さまが泣いて「こんなに優しくしてもらってありがとう、いつも声をかけてくれてありがとう」と言われ、私もすごく嬉しい気持ちになりました。その時のお客さまの手のぬくもりは、今でも忘れる事が出来ない大切な思い出になっています。